黄金色に実り始めた田んぼ道を歩きながら、お気に入りの白いヘッドホンで、覚えたての曲を爆音で聴く。
うろ覚えの歌詞を途切れ途切れに口ずさみながら、誰もいない小さな線路に向かった。
秋晴れの空と、紅く色づき始めた北アルプスを見ながらの遠回り登校が、最近のマイブームになっていた。
私は、この小さな踏切が好きだ。
周りは田んぼしかなく、踏み切りには遮断機もない。
きっと、刈り入れ時に農家の耕運機が通行するためだけに作られたものだろう
信州から日本海へと続く一本の線路は、一時間に二、三本しか電車が通らない。
しかも二車両の、短いやつ。
私は男子バスケットボール部でマネージャーをしている。
マネ子は気楽でいいよね、なんて女バレやテニス部のコに言われるけど、とんでもない。
朝練が始まれば怒涛の声出しや男子の汗臭さにまみれ、マイナスイオンもどこへやら。
だから1日の始まりに唯一リラックスできるこの時間を、有効活用しているわけ。
サビはもう完璧。
大きな声でサビをしっかりと歌い上げながら、踏み切りを渡ったその時だった。
身体がフワッと浮いたかと思うと、私はあぜ道にひざを強く打ち付けていた。
舗装されていない砂利道にヘッドホンが転がる。
そしてすぐ横で、誰かが息を切らしながら、私と同じように突っ伏すのが見えた。
思わず「何すんの!」と叫びそうになったけど、口を開いた瞬間に、背筋が凍りついた。
振り返り様に、私の足すれすれを電車が猛スピードで通過したところだったのだ。
強風を巻上げなら、二両編成の電車は田んぼ道を颯爽と走り抜けていった。
もう、動けなかった。
真っ白になった頭に色を戻したのは、聞き覚えのある怒鳴り声と、見覚えのある顔。
「何してんだよ!」
真っ青な顔をして私の顔を覗き込んだのは、バスケ部員のケンタだった。
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